これまで日本のトップ選手を多く輩出している名門・青森山田。その代表的な選手の名前を挙げれば、全日本総合5度優勝の廣瀬栄理子、ロンドン五輪銀メダリストの藤井瑞希/垣岩令佳などがいる。高校を卒業後、大学や社会人で活躍する選手の名前まで挙げればキリがないほどだ。
いまでこそ女子の強豪というイメージは強いが、先に団体戦で活躍したのは男子だった。99年の岩手IHでは全員が1年生というメンバーで団体8強に入り、全国に「青森山田」の名前が知れ渡った。ちなみに、このとき女子メンバーは3人しかいなかったが、その中には中国人留学生の楊藹琳(ヤン・アイリン)がいた。この楊は1年生ながらIH個人シングルスで準優勝を飾ると、翌年の高校選抜ではシングルスで優勝。男子の躍進とヤンの活躍もあってか、2年目には県外から数人の選手が入り、1、2年生というメンバーで青森の予選を制し、見事団体戦でIH初出場を決めている。
ちょうどこの年、1年生として入学したのが廣瀬だった。全中シングルス3位の廣瀬は、高校生チャンピオンである楊との練習や、名将・高屋仁元監督の下でメキメキと上達。この年は上位に進むことはできなかったが、翌年の01年の熊本IHでは見事団体初制覇を飾っている。
この優勝から昨年までの間に、青森山田はIH団体で9回の優勝を遂げた。個人戦を見ても、今別府香里のシングルス2連覇(03、04年)、藤井瑞希の3冠(06年)など、とにかくIHでは青森山田の強さが際立っている。高校選抜で敗れても、その夏にはしっかり優勝を取り返す。春から夏にかけての課題を克服する修正力も、青森山田のひとつの特徴といってもよいだろう。
そんな青森山田にとって、今年はうれしい夏となった。準決勝で金沢向陽との激闘を制し、最大のライバルとされた富岡ふたば未来学園に3ー0の完勝を果たした。チーム力としてのねばり強さ、そして誰もが緊張する決勝という場面で躍動できる強いメンタリティーは、青森山田の真骨頂といえるだろう。
3月の高校選抜Vに続く春夏連覇、そしてちょうど10回目となるIH制覇ーー。青森山田のたくましい伝統は、これからもまだまだ続きそうだ。