高校1年生では、00年の刘晶(高岡龍谷高)以来の女子シングルスV。2年生では、92年水井泰子(四條畷学園高)以来の1・2年生連覇。そして3年生となった今年――山口茜(勝山高)は全種目を通して史上初となる3連覇の偉業に挑む。
高校生ながら、日本代表として世界を舞台に活躍する山口。2016年のリオ五輪をめざすうえで重要な位置付けとなる世界選手権を欠場し、インターハイに専念することを決めた。その理由を、山口はこう話す。
「これまでずっと勝山で育ててもらったので、『みんなと勝ちたい』という思いがあるんです。選抜ではうまくいかなかったので、インターハイでは育ててもらった方々に成長した姿を見てもらいたい。“感謝”や“恩返し”というほどでもないかもしれませんが、そういう姿を見せることが、いまの自分にできる最大のことだと思っています」
今年3月の高校選抜。山口は1年生からペアを組む鈴木咲貴とのダブルスで見事に優勝を遂げたが、優勝をねらった団体戦はまさかの初戦敗退。そしてシングルスでは3位止まりと、決して満足のいく結果を残すことができなかった。本業のシングルスでの敗退について、山口は原因をこう振り返る。
「昨年末に全日本総合で初優勝を遂げたことで、勝ちたい思いを持ち過ぎてしまった。いつもだったら我慢してねばるところを、『もっとできる』と思って無駄に積極的にいって…焦っていました」
山口は選抜でのコンディションについて、海外遠征から帰国したばかりで疲労が溜まり、「足が動かないぶん、ミスが出た」と振り返っていたが、メンタル面での影響も大きかったことをあらためて口にした。だからこそ、この夏のテーマは「自分の全力プレーをすること」。勝敗は考えない。山口らしく、楽しみながらプレーしたいと思っている。
団体戦でも、トップダブルスとして仕事を果たせなかったことは心残りだった。なにより団体戦は小・中・高校とすべてのカテゴリーで一度も金メダルを手にしていないこともあって、以前から「団体戦で勝ちたい」と公言するほど強い思いがある。
「団体戦では、トップダブルスとしていい流れを作りたい。本番はチームのみんなも緊張すると思いますが、自分がいつも通り笑っていたら、みんなもリラックスできると思うので、そういうことも心がけたいです」
自分のことだけでなく、周囲のことも考える姿勢が“エース”らしい。
そんな地元愛の強い山口を、力強いサポーターが後押しする。勝山では『茜ちゃん応援バスツアー』が大会最終日の8月11日に計画されているそうだ。たくさんの人が注目するインターハイという特別な舞台で、山口が見せる“集大成”とは、どんな姿だろう。
団体戦は昨夏3位を超えること、ダブルスは春夏連覇、そしてシングルスは大会3連覇という目標を達成したとき、勝利を決めてもいつもクールな山口が、ちょっと違う姿を見せるかもしれない――。
山口茜のIH・高校選抜の記録は こちら
取材・文/バドミントン・マガジン編集部
山口茜 Profile
やまぐち・あかね●1997年6月6日、福井県生まれ。勝山南部中―勝山高(現在3年)。シングルスの主な成績は’06~’09全小優勝、’04’05’07~’09ABC大会優勝、’12全中優勝、’13’14IH、世界ジュニア優勝、’13ヨネックスOPジャパン優勝、’14全日本総合優勝。今年のマレーシアOPでは世界ランキング1位の李雪芮(中国)を破った。156㎝55㎏、血液型A。日本ランキング1位(7月10日現在)、世界ランキング10位(7月25日時点)。