Vol.2 箕輪はるかさん(お笑い芸人)
元日本代表選手やバドミントン経験を持つ著名人に、
バドミントンとの関わりや自身が感じる競技の魅力を語ってもらうこのコーナー。
第2回は学生時代にバドミントンのプレー経験を持つ、
お笑いコンビ「ハリセンボン」の箕輪はるかさんです。
「パワーで劣っても勝てることがある。
そこがバドミントンのおもしろいところ」
目標だった都大会出場!
――箕輪さんは中学高校時代にバドミントン部に所属されていたと聞いています。バドミントンを始めたきっかけは?
箕輪 小学生のころに公民館みたいなところでバドミントンの開放時間があって、小6のときに友達の間でバドミントンブームみたいなのがあったんです。教えてくれる人はいなくて、友達同士で遊んでいるだけなんですけど、けっこううまい子がいて。習っていないのに、スマッシュとか打てたりするので、全然勝てなくて(笑)。そこでけっこうやっていたので、中学の部活を決めるときに、「じゃあ、バドミントンやろう」と自然にバドミントン部に入りましたね。部活に入ったら、スマッシュとか打てるようになるのかなって感じです。
――中学の部活は厳しかったのですか?
箕輪 わりと厳しいほうだったと思いますね。東京都の武蔵野市立第四中という中学だったんですが、先輩たちが強くて、全国大会に行くような学校だったので。いまは考えられないと思うんですけど、練習中に水を飲んだらダメとか、上下関係もけっこう厳しくて、先輩より高いシューズを履いちゃダメとかありましたよ(笑)。『バドミントン・マガジン』は、先輩が読んでいたり、顧問の先生が持っていたりして、ちょっと読ませてもらっていました。
――ありがとうございます。好きなページやよく読んでいたページなどはありましたか?
箕輪 大会のレポートなどは見ていましたね。選手の名前はわからなくても、どこの学校が強いのかを見たりしていましたね。
――当時、あこがれの選手などはいましたか?
箕輪 そんなに選手には詳しくはなかったんですけど、ちょうど陣内貴美子さんが強かったころでした。最近、テレビ局でお会いすることがあって、「あー、陣内さんだー!」みたいな。私がテレビ番組の企画でバドミントンをやっているのを見ていただいたようで、初めてお会いしたときに「フォームがきれいですね」っていってくださって、それがめちゃくちゃうれしかったですね。
――箕輪さんご自身は、都大会でベスト16入りとか。すごいですよね。
箕輪 ……ですね。って、全然すごくはないんですけど(笑)。当時、中学生的にはすごいと思っていたんですが、いま、他の人に自慢げにいうと「すっごい中途半端だね」っていわれて(笑)。逆にいわなくなりましたね。まあ、団体戦だったので、“みんなの力で”って感じでした。
――そのときの目標が都大会出場だった?
箕輪 そうですね。地区大会があって、その次が都大会だったと思うんですけど、できれば都大会でもっと上位になって、その次の関東大会に行きたかったんです。でも、やっぱりそこまではレベルが足りなかったです。
嫌いな練習はノック。その訳は…
――当時、好きだった練習は?
箕輪 試合に見立てたゲーム練習が一番好きでしたね。逆に一番嫌いだったのがノック。たとえばスマッシュのノックはスマッシュを打つほうもきついんですけど、ノックを上げる人にシャトルを渡す役が……あれがもう嫌で仕方なかったです。
――というのは?
箕輪 スマッシュが体に当たるんですよ! バドミントンのスマッシュって(初速で)200キロとか出るんですけど、それがバンバン体に当たって。でも、よけているひまもなく渡さなきゃいけない(笑)。公立校で部費が少なかったからなのか、ノックのときは羽根がボロボロになったシャトルを使っていたんですけど、そうするとシャトルのスピードがめちゃくちゃ出るんですよね。コルクがまさに“タマ”って感じで鉛みたいに飛んできて、それが体に当たるみたいな(一同笑)。それが嫌で仕方なかったですね。
――なるほど。では、得意なショットは?
箕輪 スマッシュとか……あとはスマッシュに見せかけてドロップみたいな、すごく嫌らしい技を練習していましたね。
――ご自身のプレースタイルを分析すると?
箕輪 わりと相手の嫌がるところを突くのが好きでした。直感的なものなんですけど、「ここが嫌なんだろうな」っていうところに配球して、相手のミスを誘うみたいなのが好きでしたね。
――それは性格的なものから来ているんでしょうか?
箕輪 たぶん、そうですね(笑)。バドミントンをやっていないときは、そんな意地悪なことはしないはずなんですけど(笑)、バドミントンをしているときは相手にどうやってミスをさせてやろう、みたいなことを考えるのが楽しくてしょうがなくて。
あとは、もともと感情表現が少ないほうなんですけど、わりとそういう性格がプラスになっていたというか。試合の序盤で負けていても悔しそうに見えないところが逆によかったみたいで、相手には「後半に秘策があるんじゃないか」って勝手に思わせて動揺させるみたいな(笑)。そういうこともあって、けっこう後半に逆転して勝つということも多かったですね。
――本当は闘争心があるのに、ポーカーフェイスだったということでしょうか?
箕輪 そうですね。わりと負けず嫌いな性格で、バドミントンのときにはそういうところが発揮されていたと思います。
――部活の練習以外で、家で自主練習みたいなものはやっていましたか?
箕輪 強くなるとか、うまくなるとかに役立たないかもしれないですけど、床に落ちているシャトルをラケットで拾うとか、パスされたシャトルをラケットだけでキュッと受け取るとか……。それは家でこっそりやっていましたね。やっぱりできているところだけ見られたいので(笑)。家で練習したかいもあって、それはいまでもできますよ。
――いまだから話せる失敗談や印象に残っているエピソードを教えてください。
箕輪 ダブルスの練習中に、パートナーが思い切り振ったラケットが鼻に当たって、鼻骨にヒビが入ったことがありましたね(笑)。鼻血がすっごく出て、すぐに病院に行ったんですけど、翌日に顔の半分くらいある大きい絆創膏を貼って学校に行ったら……クラス中がザワザワして(笑)。わりと大人しい存在だったんですけど、なんかケンカとかやってるんじゃないかとかウワサになって。でも、その影響かわからないんですけど、そこから急に“鷲(ワシ)鼻”になって。ヒビが入ったところがグッと上がったんじゃないかな、って自分では思っているんですけど(笑)。
――鼻が高くなった。
箕輪 結果、高くなったんですかね。自然に整形されたということで(笑)。
漫才に生かされているもの
――最近はプレーされていますか?
箕輪 プライベートでは全然やる機会がなくて、テレビ番組の企画でたまにやるくらいですね。
――番組内でプレーされているのを拝見しました。練習をしなくても、すぐに以前の感覚でプレーできるものですか?
箕輪 いえいえ、全然。やっぱりスタミナがまったくなくて、ネット前に出て取るとか全然できないですね。以前、小学生チャンピオンの子と対戦させてもらったんですけど、そのときも全然話にならないって感じだったので。10分くらいで、もうヘトヘトになる(笑)。でも、バドミントンをやると、以前一生懸命やっていたころの楽しさみたいなものがよみがえってきて、楽しいですよね。
――バドミントンのニュースをチェックされたりは?
箕輪 スポーツニュースとかでやっていると、やっぱり見ますね。私がやっていたころは、インドネシアとかが強くて、日本は勝てるわけないって感じだったんですけど、いまは強豪国相手にも勝てますもんね。すごいですよね。
――注目している選手はいますか?
箕輪 山口(茜)さん。若いのに、すごいなって思います。レベルが違うというくらい強いですよね。若い選手が活躍して、バドミントンがメジャーになってうれしいですよね。
――箕輪さんご自身が感じるバドミントンの魅力とはどんなところでしょうか。
箕輪 もちろんパワーも大事なんですけど、パワーだけじゃなくて、ラリーを重ねて相手のミスを誘えば、パワーで劣っても勝てることもありますよね。やっていてもそれはおもしろいところですし、そういう戦略などを見られるようになると、観戦していてもおもしろいんじゃないかなと思います。
――では最後に、バドミントンをしていた経験がいまの仕事に生かされているようなところはありますか?
箕輪 バドミントンは瞬発力がすごく大事だと思うんですけど、いまの仕事でも瞬発力は全然ないので、生かされてはないとは思うんですけど(笑)。でも、コンビでやっているので、ダブルスでパートナーと息を合わせるみたいなチームワークみたいなものは、ネタとか漫才に生かされているかもしれないです。……ただ、バドミントンでは、どっちかといえば、ダブルスより自分のペースでできるシングルスのほうが好きだったんですけどね(笑)。
(取材・構成/田辺由紀子)
みのわ・はるか◎1980年1月1日生まれ 、東京都出身。武蔵野第四中時代にバドミントン部に所属し、団体戦で都大会ベスト16に進出。現在は、近藤春菜とのお笑いコンビ「ハリセンボン」としてテレビなどで活躍。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。